VOICE|日本語教室 : ボカランダ さん
今現在地球学校に通っている人、これまでに通ったことがある先輩の方々から直接お話を伺うインタビュー企画、VOICE。
今回は、日本語能力試験に合格するため、「日本語教室」のクラスレッスンに通っていたボカランダさんにお話を伺いました。ベネズエラ出身で5歳からはアメリカ暮らし。来日約10年のボカランダさんの日本語学習の話は必読です。
- 日本語能力試験のN3レベルに合格しましたね。おめでとうございます。
- はい、ありがとうございます。(12月に受験して)1月の合格発表はインターネットで見てドキドキしました。合格!ってわかって、ほんっとにうれしかった。
*合格証を見せてもらうと、「言語知識」「読解」「聴解」のうち、特に「聴解」の結果がいいことがわかりました。60点満点中50点!
- 地球学校の日本語教室でレッスンを始めたのは、いつからでしたか?
- 始めたのは5月?だったかな。自分が本当にしたい仕事をするために日本語が足りないってわかって…N2レベルが必要だった。それで学校を探して、六本木の学校とかもあったんだけど、すっごく高くて、あきらめました。土日で、横浜で、って探したら地球学校がヒットして、めっちゃ安い!と思って。
- 土日で、横浜で、安い、がキーワードだったんですね。
- そうですね。それに最初のレッスンに来たとき、先生が言ったことが「これだ!」って思った。英語で言うと…epiphany
- epiphany(エピファニー)? それは日本語で、どういう意味ですか?
- 日本語…難しいですね。…雷が落ちた、みたいな…
(一緒に調べてみると、「突然のひらめき」とある。いわゆる「ビビビッときた」でしょうか。)
自分に足りなかったのは「これだ!」とわかった
- 先生がボカランダさんに言ったこととは、何だったんですか?
- ただレッスンに来るだけじゃ合格できない。レッスン以外でも、私が勉強しなきゃだめってこと。すっごく心にひびいた。今まで日本語学校に2回通ったことがあるけど、なんで自分の日本語が上手にならなかったのか、その時わかった。これが自分に足りなかったんだ!って。学校で、授業で、は勉強してた。それだけ。家では、ちょろっとやってただけ。本当の勉強のやり方を知らなかった。
先生は12月のテストの日までに何をしたら合格できるか、これも話してくれた。テキストの計画、次のレッスンまでにすること、、、丁寧に教えてくれた。「自分が」勉強しなきゃいけないって、よくよくよーくわかった。
- 言うのは簡単ですけど、実行するのは難しいですよね。ちゃんと実行したボカランダさんがすごいです!実際にレッスン以外で、どのぐらい勉強をしていたんですか?
…すると、
スマホにキーボードをつけて何やら入力しだした。計算し、彼が出した答えは…
- 一週間に、全部で20時間ぐらいかな~。レッスンがある土曜日は朝6時に起きて7時にスタバに行って、10時まで勉強した。コーヒーがあるから絶対に眠らない!これ大事。そのあとレッスンで2時間でしょ~。家に帰ったら妻と遊んだりするけど、2時間、3時間は勉強した。日曜日は少ないときもあったけど、ずーっと長く勉強するときもあったから土曜日と同じぐらい。
月曜日から金曜日は、一日2時間ぐらいかな。朝と昼休み、ちょっとでも勉強した。夜は仕事から帰るのはだいたい19時ぐらい。ごはんを作ったり食べたりしたあと、寝る前に1時間ぐらい。
- 一週間に20時間も?レッスン時間の10倍!「自分で」勉強したんですね。本当にすごい!どんな勉強を?
- 先生は次のレッスンでテキストのどこをするか言ってくれるから、言葉の予習や漢字をしていた。レッスンでわからない言葉がないようにする。漢字の言葉を調べたり覚えることを中心に。先生と約束した漢字の勉強が一番時間がかかったかな。予習、復習。どっちもした。漢字は終わらないときもあった。
たとえば、月曜日から金曜日は、6:30に起きてシャワーのあとリスニング10分ね。昼休み、食べるのは20分でいいでしょ。40分は漢字の暗記ができる。使ったのはAnkiDroid…無料のアプリがあるから。水曜日は文法って決めたりもしたかな…。テキストじゃない勉強もした。youtubeの「日本語の森」は、すっごくいい。(実際にどんな内容か、スマホで見せてくれた。)
日本語のレッスン中の表情は真剣そのもの
日本語は日本に来てから、ひらがな・カタカナから
- そんなボカランダさんですが、初めて来日したのは、いつでしたか。
- 日本に初めてきたのは2008年、19歳のとき。アメリカで大学生だった。そのころ、オンラインゲームがブームで、ネットで一緒に闘っていた中に日本人もいっぱいいた。その中の日本人の女の人と仲良くなって、彼女がアメリカに遊びに来た。それがきっかけで、最初は旅行ビザで日本に3カ月いただけだったけど、そのあとは留学ビザをとって日本に来た。
それから結婚を決めて二人で暮らし始めた。その日本人の女の人とね。横浜で。結婚するためにはベネズエラに行く必要があったけど(書類の関係で)、ま、大丈夫だった。それで家族ビザになりました。
- アメリカではなくベネズエラに行って手続きをしたんですね。
- そう。4歳までベネズエラに住んでいて、そのあとは家族とアメリカに。でも国籍はベネズエラです。スペイン語と英語と。英語が一番上手だけどね。
- 来日する前に、日本語を勉強したことはあったんですか。
- 日本語は、まったくわからなかったんで、ひらがなとカタカナだけ何とか自分で勉強して、そのあと日本語学校へ入学して、アルバイトをしながら日本語を勉強したけど初級まで。アルバイトと日本語を両方するのは大変だったので、どっちかを選ぶ必要があった。で、学校は卒業した。家族のためには、お金も大切。でも…大失敗だったね。このとき辞めないで日本語をちゃんと勉強したほうがよかったかな。
仕事も私生活も、いろいろあったから今がある
- じゃあ、そのあとは仕事だけをしていたんですか。
- いや、車の免許をとった。仕事でもあったほうがいいから。でも、試験があるよね。日本語は難しいから…英語で受けた。私、英語は問題ない。ただ、お金がめっちゃかかる。ほんと、めっちゃ高い!一番の問題は、車の学校は英語だと日本人の二倍お金がかかるってこと。だから、すっごいお金が減った。
それにそのころ…奥さんの浮気をみつけちゃって。弁護士を探した。弁護士は、すぐに見つかった。でも、それもお金がかかる!
- 弁護士は日本人ですか。それとも英語がわかる弁護士ですか?
- 日本人。英語はそんなにわからない人だけど、私に有利な離婚ができるように教えてくれて…それで自分の車を彼女にあげることにした。そして、彼女は離婚にサインをしてくれた。彼女は、悪いのは全部自分だから、ボカランダを日本に残してほしいと言ってくれた。それでビザの問題も解決した。
- そのとき、国へ帰ろうかな、とは思いませんでしたか?
- 思わなかったですね。アメリカにもベネズエラにも、戻る場所はないから。日本で生きていくしかない、日本にずっと住む、と決めましたね。
- じゃあ、そのあとは日本で独り暮らしを始めたんですね。
- いや…(笑)そのあとも奥さんと少し住んでいた。離婚届も出したけど、まだ離婚はできなかったから。ちゃんと離婚できるまでは時間がかかる。一年ぐらいかかった。相手は困らない。でも、私だけいろんなこと困る。お金はなかった。お金は車の免許で全部なくなった。新しいアパートを見つけるのも、すげえ大変だった。いいところを見つけても、何回もダメダメ、外人ダメダメ言われて。でも新しいアパートをみつけないと、あいつと一緒に住むしかないから…あきらめなかった。やっと安くて新しいアパートを探した。
そのとき、自分にあるのは原付とパソコンだけだった。ネットで探して、フランス人から5つのセット「ふとん、冷蔵庫、洗濯機、炊飯器、ガスレンジ」23,000円で買った。引っ越しは会社の車で、した。電話は前の奥さんの名義?だったけど、ソフトバンクのキャンペーンがあって、docomoから乗り換えたら、iphoneが無料で手に入ったし、名義も変更できたし。超ラッキー!ラッキーなこともある。
困ったときは、私を助けてくれた友だちがいたしね。これは良かった。日本人の友だちは日本語も教えてくれた。彼と同じゲームをしたい、という気持ちで必死でコミュニケーションした。私が自分の気持ちを伝えたかったですから、やりとりからいっぱい日本語を覚えた。彼がいなかったら、私の日本語はこんなに上手じゃなかった。すっげえいい人。感謝してる。
初対面の人ともすぐに打ち解ける魅力的なスマイルの持ち主
【解説】
その後、ボカランダさんは新しい仕事をみつけて、五カ月で正社員にもなれた。25歳の頃にはボーナスももらえるようになり、貯金もできるようになった。それとともに、自分が本当にしたい仕事は何かと考えるようにもなった。それで、社内では異動希望を出してインターンシップの経験をさせてもらった。社外ではIT関連の転職を考えて履歴書もたくさん出したが連絡はもらえなかったそう。
そうこうする中で、自分には経歴として書けるほどの実力がないことを悟ったという。それは、面接をしてくれた会社の担当者が、ITやプログラミングの経験がない事実を突きつけてくれたから、とのこと。そこから自分の仕事はITではなく貿易の仕事だという思いに至る。そんな折、ある会社の輸出の仕事に巡り合う。ボカランダさんが日本語・英語・スペイン語の三カ国語できる点も評価されたのだとか。自分の複雑な人生が役に立つ時が来た。N3に合格したことも大きいはずである。
- この春から新しい職場で働くんですよね。現在の生活を教えてください。
- いまは独り暮らしじゃないです。すばらしい人と出会って結婚した。日本人。お弁当も作ってくれるし、優しい。最高。妻は英語もOK。だから会話は英語でコミュニケーションしてる。新しい仕事は、あんまり残業がないし、シフト制だけど正社員だからいい。次はN2を受けたいし受けるつもりです。でも、まずは新しい仕事に慣れることかな。これからも日本語の勉強はがんばります。
日本語上達への道…たどり着いた答えは「自分で!」
- 最後に、日本語のレッスンをしている人にメッセージをお願いします。
- レッスンに行くだけじゃだめですね。自分が勉強しなきゃダメってことです。何回も!たくさん!自分で勉強できるときにやりましょう。テキストじゃないことも、何でもやってみる。私はYoutubeが一番だった。覚えるのは、語彙や漢字。たくさんあったほうがいいですね。ラジオはCMが多くて、あわないな、と思った。
漢字は、私はパーツで勉強した。覚えるためにストーリーを自分でつくった。たとえば、「目」って漢字を覚えたら、目に足があったら「貝」ね。「見」とか「自」とかも、「目」でストーリーをつくった。見れば意味もわかる。パーツが複雑な漢字はストーリーをつくるのが難しいし、すっごく時間がかかるけど、できるとうれしい。
外国人が日本で生活すると、トラブルもいろいろあるけど、今までサバイバルだったけど、ちゃんとやってこれました(笑)よくやったね。
日本語は難しいし、仕事は忙しいし、一人で日本語の勉強を続けるのは難しいですね。どうやったらいいか自信がないし。だから短い時間で合格するためには、日本語のレッスンを受けたほうがいいですね。先生がプランを考えてくれるし、わからないことを教えてもらえるし、日本語の勉強を応援してくれるから。合格できたら、やっぱりうれしい!
皆さんも、あきらめないで、がんばりましょう。
何があってもあきらめない強さのあるボカランダさん。視線は既に未来へ向かっている。
【こぼれ話】お金がなかった時の生活談:食べ物編をご紹介!
- 「もやし、とうふ、ごはん」
サイコー。あのときは好きじゃなかったけど、一番安いですからね。
いまは味も好き。しょうゆをかけて食べれば何でもおいしい。しょうゆ一番サイコー。
- 「コンビニでパンの耳」
が無料でもらえると知らなかった。初めてもらえたとき、感激した。
- 「カップラーメン」
これは高級品。
一人暮らしでカップラーメンが買えるようになったとき、生活が少し楽になったな、と感じた。
ボカランダさんが通っていた、日本語教室を詳しく見る → コチラ
今日はありがとうございました。