VOICE|地球学校:寄付月間日本大通実行委員会
地球学校に現在通っている方、過去に通ったことがある方、地球学校で活動している方から話を伺うインタビュー企画、VOICE。
今回は寄付月間日本大通実行委員会。地球学校が2018年から毎年参加している寄付キャンペーン活動は、今年で5年目を迎えています。横浜市の日本大通にあるKosha33ライフデザインラボを拠点とし、趣旨に賛同した仲間とともに歩んできました。
ライフデザインラボの所長である船本由佳さん、寄付月間アンバサダーである橋爪智子さん・三坂慶子さん・丸山伊津紀さんの4名が、この5年を振り返るとともに未来への思いについて語り合います。聞き手は、寄付月間2022日本大通実行委員会の広報担当である菅原です。この座談会は2023年2月9日、オンラインで開催しました。
1 はじまりの思いと四人が出会ったイベント
2 寄付への課題と寄付への思い
3 5年目は活動の場がないことからスタート
4 日本社会における寄付の話をしてみたら
5 みんなと一緒に12月に向かって進むこと
- まずは、皆さんの所属と活動内容をお願いします。
(船本) 横浜市中区の日本大通りにある、Kosha33ライフデザインラボの所長をしています。ライフデザインラボは「つながり作りの実験室」をテーマに活動を行っているコミュニティです。専門性がある人もない人も様々な人が「研究員」を名乗って参加してくれていて、「実験」と称してそれぞれの活動を行ってもらっています。
(橋爪) NPO法人日本補助犬情報センターで専務理事兼事務局長をしています。身体障害者補助犬(盲導犬・介助犬・聴導犬)をパートナーとして生活をする、障害がある方々の自立と社会参加の促進を目的とした活動をしています。身体障害者補助犬法(補助犬法)成立から20年の節目の年に、さらなる普及啓発に力を入れて展開しています。
(三坂) NPO法人Sharing Caring Culture(シェアリング・ケアリング・カルチャー)の代表理事をしています。私たちは、主に横浜市北部地域に住む外国人の子育て支援と外国出身者を講師とした多文化交流事業を行っています。
(丸山) 認定NPO法人地球学校で理事長兼広報をしています。日本に住む外国人の日本語をサポートすることで多文化共生に向けた活動をしています。外国につながる子どもたちには、日本語だけでなく教科学習や居場所となる地球っ子教室を開催しています。
【写真】左から、船本さん、三坂さん、橋本さん、丸山さん(2022年12月2日のイベントで)
はじまりの思いと四人が出会ったイベント
- 「寄付月間日本大通実行委員会」として活動を始めたきっかけを教えてください。
(丸山) はじまりは2018年の夏、私が船本さんに「寄付月間の活動を一緒にしたい」と伝えたことでした。寄付月間という取り組みは日本で2015年から始まっていて、地球学校として助成金より寄付金を増やしたいと思っていたことからその活動を知り、2016年・2017年に自団体だけで少し活動してはいました。
寄付月間(Giving December)とは、「欲しい未来へ、寄付を贈ろう」を合言葉に毎年12月の1ケ月間、全国規模で行われる寄付の啓発キャンペーン。
- 今のように日本大通で実行する前の段階があったんですね。
(丸山) はい、地球学校だけで細々と。ただ当時は”自分たちの活動のためにお金を集める”のは寄付月間の企画としては認められませんでした。自団体への寄付を募るためには、多くの人と一緒に何かをやるか、実行委員会という形式で活動するといいですよ、と共同事務局の方からアドバイスをいただいたことから他団体と一緒に何かをしよう、と。
- 寄付月間の活動方針も今とは違ったんですね。
(丸山) そうなんです。「自分以外の誰かのために」がキーワード。なので、誰かと一緒にやりたいなーと思っていたところ、地球学校につながりのあるトウ・シュールさん(一般社団法人ユースクラシック)がライフデザインラボの存在を教えてくれて、所長の船本さんとつないでくれました。それが寄付月間日本大通実行委員会が始まった2018年です。
- 船本さんは初めて寄付月間について聞いたとき、どう思われましたか?
(船本) 一つの団体・活動ではなく、複数の団体で協力し合うことにラボとの共通項を感じました。
というのは、もともとライフデザインラボは、私が子育てしていた時に社会から取り残されたような感覚を強く覚えて、その取り残され感を持ってる人が他にもいるんじゃないか…と感じたことから始まっています。
多様な生き方や暮らし方を認めて欲しいという思い、”王道を走らなくても、疎外感を感じない”ようなコミュニティが作れたらいいな、という思いでした。
- ライフデザインラボは多様性を実感できる場所なんですね。
(船本) はい。さまざまな状況にある多様な人たちが隣りあって過ごしながら、誰か「先生」から学ぶんじゃなくて、隣の”重要な他者との出会い”ができる場所です。隣りあった人の何気ない経験談から学べるような場所を作りたいと思い、2018年に発足したばかりでした。
なので、ライフデザインラボとしての方向性と、丸山さんから聞いた寄付月間の公認企画っていう仕組みがすごくしっくりきたので、ご一緒させていただくことにしました。
- 橋爪さんが寄付月間に参加された経緯は?
(橋爪) 私は日本ファンドレイジング協会で准認定ファンドレイザーの勉強をしていて、その活動の延長で寄付月間が日本で始まったということを知りました。
ただ、丸山さんの話にもあったように、当初は”寄付文化の醸成”が寄付月間の目的であり、自団体のためだけの寄付集めは企画として認められていなかったので、自分の所属団体としてどのように参加するか考えがなかったんです。
それに当時の自団体の悩みとして、全国規模の活動はしていたのですが、自分たちの事務所がある横浜では何も展開できていないことに気づいたんです。
そんなとき、ライフデザインラボで2019年夏に開催された「他者理解」をテーマにした【まちすき】という企画に、船本所長からお誘いをいただきました。そのイベントで、Sharing Caring Cultureの三坂さん、地球学校の丸山さんとご一緒したんです。この四人がそろったときですね。
今までのように福祉現場の人間だけじゃない多様な人、多様なセクターの人がいる場に大きな可能性を感じました。この企画のあとに、寄付月間日本大通実行委員会の話を知り、2019年から寄付月間日本大通実行委員会に参加しています。
- みなさんが参加した【まちすき】とは、どんなイベントですか。
(船本) 「知ることで、まちをどんどん好きになる」をテーマに、ライフデザインラボが2019年の夏に主催した企画です。身近な多様性を知り、また、その情報を発信する書き手を育成することで、主体性を持つ市民を増やすことを目的としていました。
その主な企画として「国際理解の会」「障害理解の会」「世代間理解の会」の計3回を実施し、それぞれの団体を運営されている丸山さん・三坂さん・橋爪さんにご協力いただいたんです。
(三坂) 私たちは普段「多文化共生」という領域で活動していますが、福祉など他の領域と横断的につながることができれば、多様性への理解の裾野が広げられるのではと以前から考えていました。
なので、この【まちすき】の企画に声かけをいただいたのは良いきっかけで、その後も福祉など他のセクターとのつながりを意識するようになりました。
【写真】2019年7月1日「知ることでまちをどんどん好きになる」国際理解交流会
寄付への課題と寄付への思い
- 「多様性」が共通項とのこと。寄付への課題も共通してあったんですか?
(丸山) NPOの活動を継続するうえで寄付はミッションの一つとしてあります。多かれ少なかれ、どの団体も同じだと思います。地球学校はNPOになって20年以上が経つ団体で、今まで助成をしていただける機会が数多くありました。それは本当にありがたいことです。
それはそれとして、助成金はありがたい反面、使途に縛りがあって自由に使えるわけではないし、助成によっては疲弊しがちでもあります。それで寄付を増やす方向も考えよう、という話になるわけですが、自分も含めてスタッフは「寄付金をください」「会員になってください」という言葉かけが苦手で…
なんとなく後ろめたいというか…当時は寄付について無知で、語ることもできませんでした。なので、まずは寄付とは何かを知ることが大切だな、という思いに至ります。寄付月間の活動を通して徐々に寄付を知る機会になりました。
寄付といえば寄付金、とお金のことが一番に浮かびますが、5年間活動することで寄付金に対する心のハードルが薄れたし、寄付とはお金に限らないことも学びました。考え方が変わりましたね。
- ほかの団体では、どうでしたか。寄付って?
(三坂) 私たちはもともと、助成金が6割。寄付金は全体の5%ぐらいです。日本で子育てをしている外国人家族への寄り添い、理解と交流を活動目的としているので、参加型のイベントをよく開催しますが、イベントにはどうしても企画運営費や人件費がかかります。助成金頼みでイベント開催の可否が決まるというあり方は、不安定だなと思っていました。
それから、活動の大きな要として、『OYACO(おやこ)』という地域の子育て情報冊子をやさしい日本語と英語の二種類で出版しています。これは国際局の補助金で出版しましたが、その後増刷が必要になったときに増刷分は自己負担する必要があり「印刷費、どうしよう」という問題が現実にありました。
安定した活動運営のための資金獲得やファンドレイジングについて考えることは課題で、寄付金の割合を上げたいと、特にコロナ禍を経て思うようになりました。
(橋爪) 私たちの活動は全国規模で展開していたり、政策提言のようなアドボカシー的なこともやっていますが、そういった活動はなかなかお金にはつながらない作業が多くて苦労してきました。
補助犬っていうと実際に補助犬を訓練している訓練センターというイメージが強いと思います。そういう訓練団体さんは全国で20数団体あって、寄付金が多く集まるのですが、私たちの団体は日本で唯一犬の訓練はしていなくて、情報提供・相談業務を専門にする学術団体なんです。そうなると、特に日本では、お金集めが難しい状況にあるんです。
企業寄付も個人寄付も伸び悩み、助成金を併用しながら何とか継続してきましたが、2011年の東日本大震災の影響は非常に大きく、そこから組織改革をして、法人継続の道を探りました。
改めて自団体の運営についても勉強しなおすために、寄付・ファンドレイジングについて、神奈川県や横浜市が提供してくれている研修を受けたりしました。その中で、日本ファンドレイジング協会で准認定ファンドレイザーと社会貢献教育ファシリテーターの資格を取得しました。それが、私の口から寄付について発信し始めたきっかけでした。
- NPOの運営面から、寄付月間の活動につながってきたんですね。
(橋爪) そうです。そして伝えたいことは共通していました。「自分とは違う誰かのことを考える」ことができなければ、寄付文化も醸成しないし、社会課題はなくならない。そこからのスタートだと。
なので、寄付とは自団体への寄付だけではなく、広い視野での社会貢献というか、社会全体への発信・教育の必要性を伝えるためのツールだと考えています。
5年目は活動の場がないことからスタート
活動5年目に当たる2022年度の日本大通実行委員会の活動は、初年度から会場であり開催に協力してくれていた神奈川県住宅供給公社の建物が改装のため利用できない状況がありました。船本さんが所長を務めるKosha33ライフデザインラボが1階に入っているビルです。過去いずれも、この場所でメインイベントを開催してきました。コロナ禍もオンラインが中心ながら、この場所から発信をしました。今年はその場がない中で実施しました。
- 2022年度の日本大通実行委員会の活動を振り返って、いかがですか。
(丸山) 今年は計17の賛同企画が実施されましたが、集まる場がなかったからこそ広報に力を入れてきましたし、新しい挑戦もできました。今まではfacebookだけでしたが、Twitterでもつぶやいてみたり。特にInstagramでは実施前の広報だけでなく実施後の報告としてリール動画を発信したりも。個人参加の広報サポーターもありがたい存在です。
【後日談】2023年3月14日、寄付月間2022「みんなの報告会」~寄付月間大賞 表彰式~において、日本大通実行委員会が賛同パートナー賞をいただく、というオマケがついてきました。授賞理由は「寄付月間中の情報発信を積極的に行っていました。」でしたから広報に力を入れたことが評価されたようです。また、「毎年、複数の賛同企画を実施している」と5年間継続してきたことも評価していただき、5周年にふさわしい年となりました。
個人的には今年一番印象に残っているのは、山下公園をこのメンバーで一緒に走ったこと。初参加のウッチーの1dayチャリティーラン企画は強く記憶に残っています。12月の朝7時から、めちゃめちゃ寒い中だったんだけど、なんか笑いながら走っていました。
- それぞれの団体として、2022年度の寄付月間はいかがでしたか。
(三坂) 私たちの団体は、今年はクラウドファンディングでマンスリーサポーター(継続寄付者)を30名募集するというキャンペーンを行い、大きなチャレンジをしました。
キャンペーンを実行した背景としては、日本語が不自由な外国人が日本での子育てで大変な思いをしていたり、言葉や文化的な壁から孤独な育児に置かれやすかったり、必要な情報が得られず育児の質が下がったり、という社会課題があるのに、まだまだ日本社会の中では認識されていない、そういったことを私たちが問題提起し、可視化していくためのキャンペーンが必要ではないかと思っていたことでした。
ただお金を集めて一時的に支援してもらうのではなく、もっと日本人に課題を認知してもらう必要があるんじゃないかなという思いで、キャンペーンを開催しました。結果として、36名のマンスリーサポーターが集まりましたが、神奈川県外、国外からも支援者になってくれる方が現れ、こうした課題を知って、共感してくれる方々が思った以上にいるんだなというのが手応えとしてありました。
寄付会員になってくださった方のうち、「自分も何かしたい」と言ってくれる方も。私たちの活動を見ているうちに「私も外国人に自宅で簡単に作れる和食を教えたい」っていう思いになったそうで、「じゃあそれやりましょう」って、ビーガン箱寿司クッキングのイベントを実施しました。
最初の入口は寄付だったのが、チームメンバーになりたいです、とチェンジする。これはお金じゃない寄付を継続してもらっているのと同じで、とても大きな意義があると思っています。寄付をしてくれた人にもそういう活動の機会を提供できる、そういう参画の機会って大事だなと思っていて。
もちろん、寄付者は時間的に関わることが難しいからこそ金銭面で支援してくださる方がいるわけですから、それも一つの選択です。寄付を通じて団体との関わり方の種類が、選択肢が多くあるといいのかなと思っています。
(橋爪) 2022年は「補助犬法(身体障害者補助犬法)20周年」なので盛り上げたいという思いから、私たちも初めてクラウドファンディングを実施しました。
20周年とはいえ、イベントをするには多大なお金がかかるし、そのために助成を受けることもなかなか難しい…そもそも障害福祉系のイベントへの助成制度は少なく、あったとしても十分な金額は得られません。そこで、補助犬や障害福祉に関心がない方にも知っていただける機会としてクラウドファンディングにチャレンジしました。単発の寄付です。
クラウドファンディングは、地域を限定することもなく、支援してくださった方にリターンという形でお礼の気持ちを伝えることで双方向につながることができる点が良かったです。大変なこともありましたが、啓発というだけでなく支援の輪が広がったと感じています。
このあと、支援をしてくださった150人の方々とどうつながっていくかが大切ですね。単発的な一回だけのサポートから、その後も何か一緒にやってみようとつながっていけたらいいなと思っています。三坂さんのSCCの例と同じように、継続的にサポートしてもらえる視点へ。
(船本) ライフデザインラボの2022年の寄付月間は、メンバーが自発的に動いてくれてイベントをたててくれました。寄付月間5年目だなーって感じです。
ラボはNPOじゃないこともあって、寄付に対する思いは、そこまでは強くないですね。それはそれとして、寄付月間って最初は寄付を集めるものだと思い込んでたんですけど、お金だけじゃないって知ったとき衝撃だったので、むしろそのことを伝えたい。積極的にお金を集めていなくてもいいってことを。
とはいっても、寄付って形で何かしら関わりたいとも思っていて、募金箱を置いて参加しています。募金する体験をすることはとても大切だと思っているので。ほかにも、くるくるマルシェみたいな感じのライトな参加をしたり、ハードルの低い寄付アクションを、と。小銭を入れる気持ちのような。
- 「くるくるマルシェ」は、いつごろから?
(船本) 2年目からかな。ママ力の会のように洋服の地域循環とか、つながりを作りましょう!まではいかないんだけど、「欲しい未来を寄付で作ろう」という言葉が響いたんですよね。
それまでは団体にお金を渡すことが寄付だと思っていたんですけど、寄付の活動っていうのは、実は自分が欲しい未来に対して、自分のためにお金払っているんだってわかったので、そのことを伝えたいなと思っていて。
自分がこんな未来になればいいのにって思う未来があったとして。でも、自分はそこで活動することもできないし、その代表になることもできないとけど、誰かが活動してくれることで自分が欲しい未来に近づくなら、その誰かを応援したらいいじゃんっていう話で。
自分のためにお金を払っているのだから、自団体のために寄付を集める行動じゃなくて、誰かのアクションを知って欲しいし、社会に役立つ活動をしている人たちのところにお金が届く方法として寄付活動があるのかな、と。
日本社会における寄付の話をしてみたら
- 寄付月間の活動の今後への思いをお聞きしたいです。
(三坂)寄付に対する考え方って本当に多様だなって。特に今年のオンラインイベント「寄付カッション」を通して思ったんですね。
私は寄付することに抵抗がないほうで、自分から寄付したいという意識がデフォルトとしてある。けれども、中には寄付は偽善的だという考えの人もいて、自分の当たり前と他者の意識は同じじゃないことを、寄付を通して改めて感じたんです。
(橋爪)寄付カッションを主催した立場としても、多様な意見が出てきたことが良かったと思っていて。意味があるなーと。
(三坂) そうですよね。みんながみんな寄付しなきゃいけないよっていうのは違うと思っていて。寄付について話せる場が増えるといいのかなって思ってます。寄付カッションみたいな場を広げて、どっちが正しいかではなくて、それぞれの立場から話す機会を作りたい、増やしていきたいって感じています。
(丸山) それ、大切ですね。そして三坂さんらしい。三坂さんのNPOではスタッフに外国人の方も大勢いて、丁寧にディスカッションして進めている印象があります。言葉も英語と日本語、両方を使いながらだから、合意形成に時間がかかるだろうな、と。
(三坂) ほんとに時間はかかりますよ。なんだけど、寄付についていえば、割と求めやすい環境ですね。外国人の主体的な参加の場としてやっているので、団体の中では寄付に対する抵抗はないです。
一方で、日本で寄付を推進していくのは、けっこう難しいと思っています。実はSCCのマンスリーサポーターになってくれた方は海外在住の日本人が割と多いんです。もしかしたら、そこにヒントがあるのかなと思ったりします。
外国在住の日本人が置かれている立場と、日本在住の外国人の立場が共感しやすいのがポイントかと。何が大変かが言葉以上に伝わるっていうか、構造が似ているから共感性が生まれやすいのだと感じています。
- 寄付月間のアンバサダーとしての活動は?
(丸山) 私が寄付月間アンバサダーとして意識的にしていることは「12月は寄付月間って知っていますか」って問いを言い続けているだけかも。だいたい「知りません」って言ってくれるので、問いかけたことで寄付月間について知る機会になって良かったなって。
(橋爪) 私は今年、アンバサダーとして、寄付月間日本大通実行委員会として、神奈川県のテレビ番組やFMラジオに出ることで、考える機会をたくさんいただきました。
■TVK「カナフルTV」放送 12月11日(日)
アーカイブリンク https://www.tvk-yokohama.com/kanaful/2022/12/220221211-giving-december.html
■FMヨコハマ「KANAGAWA Muffin(かながわマフィン)」放送12月17日(土)
ポッドキャスト https://www.fmyokohama.jp/podcast/life/kanagawamuffin.html
(橋爪) 寄付に対する意識とかイメージは本当にそれぞれで、「寄付ってお金のイメージが強かったです」とか「お金以外の形があるっていうのは初めて知りました」っていう声をたくさんいただきました。
寄付をしてみようって行動につながるには、まずは知る機会が必要だな、と感じています。番組内でアンバサダーとしてコメントすることで再確認したことは、子どものころから寄付に接して寄付の成功体験をすること、それが日本の教育の場に普通にあることが大切だ、ということです。
寄付することに慣れていない状況で大人になって、大人になったら寄付しなさいって突然言われているようなのが今の日本社会なんじゃないかと。そこが海外との大きな差かな。日本は世界の中でも寄付指数が低いという数字があります。ただ、実際は「決してそうではない」とも思っています。
- 世界寄付指数のお話、寄付カッションでも話題でしたね。
世界寄付指数はWorld Giving Indexのこと。イギリスのチャリティー団体 Charities Aid Foundation(CAF)および、アメリカの世論調査企業ギャラップの調査による、人助け、寄付、ボランティアに関する指数。2010年から発表されている。
世界119カ国を対象に、過去1カ月間に「見知らぬ人、もしくは助けを必要としている人を手助けしたか(人助け)」「慈善団体に寄付をしたか(寄付)」「ボランティア活動に参加したか(ボランティア)」などの質問を行い、その結果を指数化・ランキング化している。2022年の日本の世界寄付指数は119か国中118位。
(橋爪) そうそう。その質問項目のうち「この一カ月、人助けをしましたか」という数値が日本人は低いんだけど、それはきっと日本人の奥ゆかしさの現れじゃないかと思っています。「私は人助けをしました」って言わない国民性なだけじゃないかと。
寄付について話し合う場に参加することも、SNSをフォローするだけでも、支援に、人助けに、つながってると考えているけど、その行動をしている側は必要以上にアピールしない、国民性としてでもあり、普通すぎて意識して言葉にしていないこともあるのかな、と。自主的にしている行動にすぎないといえば、たしかにそうで。
でも、人助けや支援って目につきやすい行動だけじゃないんですよね。NPO側の人間としては、SNSのフォローや応援をしてもらえることも励みになっているし、助けてもらっていると感じる。NPOの運営は寄付金もだけど、こういう応援に支えられているんですよって。伝えたい。
家族や友達と話題にするだけでも支援につながるって話はするんですけど、なんかそのぐらいハードルは高くないもの。そんなこととともに、子どものころから、そんな多様な寄付について、支援することについて、見たり聞いたりするきっかけが増えればいいなと思っています。
- たとえば日本でも赤い羽根募金とか学校のベルマークとかは身近にありますよね。
(橋爪) そう、確かにそれもそう。ただ、問題は寄付した100円がその先で誰に使われたかわかっていないってことですね。寄付して偉かったねー、良かったねー、って。その先を想像することにつながっていない気がします。赤い羽根をもらって終わり、みたいになることが多い。ベルマークは学校として何万円集まったよ、ぐらい。
それでは成功体験にはなっていないんです。100円を持たされて行動したけど、そこでそれ以上の喜びはない。誰の笑顔につながったのか知る機会があれば、きっと自分から来年も行動しようってなる。すごくもったいない。今の日本の寄付は、たぶんそこなんですよね。
私たちが伝えたいことも、寄付のお金を集めましょう、じゃなくて、寄付について知ってくださいとか、自分以外の誰かのことを想像してみましょうとか、社会課題を知りましょうというきっかけを作りたいっていうところ。そこが最初の一歩かな。
(丸山) そう、確かに寄付=お金のイメージ。お金の話はタブーな社会が日本だと感じています。だからこそ、お金のその先を知ってもらうための何かが足りないんだ、という反省もあります。寄付ってなんだろうって知るきっかけに寄付月間の活動がなれたらいいなと思います。
- 寄付をした先に何があるかを想像すること、確かにそうですよね。
(丸山) そう。そのためには伝える側が想像できていること。それを言葉にすることが大切です。「お金をくださいって言い出しにくいな」って気持ちで話すと、そのまま伝わってしまうはず。伝える側の意識を問い直す必要があるって学びました。自戒とともに。
お金で寄付をしたいと思ってくださっている方は実際に多くいるんです。地球学校では寄付月間に参加するようになってから毎年「12月は寄付月間です。寄付をお願いします」と、伝え始めて、毎年一定額の寄付金が集まるようになりました。それは同時に、昨年の寄付金は何に使いました、今年の寄付金は何に使います、って伝える機会であり、その寄付金が誰の笑顔につながったか想像できるように伝える。そのことが、やっぱり大切ですよね。
- 寄付をする側が寄付をしやすくなる、寄付したいって気持ちになりますね。
(丸山) そうなんです。寄付をお願いしますと伝える機会をつくることの大切さを教えてもらったのは、寄付月間だけでもないんです。自分たちのNPOのウェブサイトをリニューアルしたとき、ウェブデザイナーさんがサイトのデザインだけでなく寄付につながる行動のデザインも提案してくれました。
「丸山さん、寄付したいって思ってくださっている方は一定数いますよ。寄付するタイミングを待っているんですよ」って背中を押してもらったおかげで、躊躇することなく「寄付をお願いします」って言葉にできるようになったし、ちゃんと堂々と伝えること、いつお願いしたいかを伝えることが大切だと思えました。
いつでもいいので自由に寄付してください、っていうのは確かに行動しにくいですよね。「いま、お願いします」が大切だと学びました。
(橋爪) 確かにそうかも。自分たちのクラファンのときも「言ってくれたらよかったのに。今までずっと支援したいって思ってたから」って言ってくれた人がけっこういたんですよね。「こんな機会をくれてありがとう」とも。「ありがとう」って寄付をしてもらった自分たちが言う言葉だけじゃないんだって思いました。
(丸山) それは素敵なお話ですね。寄付することが自然になっている方なのかな。常々、何でも慣れが大切って思っているんですね。なので、日本人が寄付に慣れていないというのであれば、見聞きして触れる回数が必要ですよね。さっきの話にあった寄付した先にあることを想像するのとセットで、寄付に慣れる機会を作りたいですね。
みんなと一緒に12月に向かって進むこと
- 寄付月間日本大通実行委員会の5年間の活動について振りかえってみると?
(船本) 私の場合、つながりが一番のごちそうなので、寄付月間は新しいつながりのはじまりであり、つながりが強くなる時間みたいなものでした。誰かとつながりたいな、って思ったとき、寄付月間を引き合いにしてつながる、場に引き込むという都合のいい言葉でもあるかも。
あるとき、ライフデザインラボを分析してもらったことがあったんですけど、住宅街にあるコミュニティ・スペースと違って、ライフデザインラボのコミュニティの特徴は、個人事業主とか団体の代表がいることだ。って言われたんですよ。そのカテゴリーの人たちが悩みを語りあったりとか、何気ないこと、あるある話ができる場所ってそんなにないから。それが貴重なんだっていうことがわかって。
そんなことから、個人事業主とか団体の代表は発信力を高めることが大切だよね、ってなって、寄付月間の活動を通して発信する方法もセットにするようになったんです。
(丸山) 本当にそれ、ありがたかったです。寄付月間の5年間、船本さんが毎年、自分たちの活動の発信方法を一緒に考えてカタチにすることをセットにしてくれたこと。だからNPOとして広報できるものが5年分蓄積されているんですよね。一年目はパネル展示、二年目はポスター展示、三年目は動画制作、四年目は4コマ画像って。伴走してもらえたからカタチになっている。
(橋爪) ほんとに。広報とか発信って自分たちだけでは難しいから、ありがたいし、得られるものが多かった。
(船本) 寄付月間は12月に向けて進めるって目標があるからプログラムが立てやすいんですよね。発表の場があることが大切じゃないですか。だから寄付月間はいい。
(丸山) そういえば、今年の寄付月間後の参加者アンケートにも同様のコメントがありました。初めて参加してくださった方が「自分たちだけじゃ発信できない広報ができたことに、すごく感謝している」という趣旨を書いてくれていましたね。
(橋爪) ほんとにそう。自分の団体だけだと、どうしたらいいかわからないことも一緒にできるし、他の人としゃべったり、相談したり、それがあるから毎年続けているし参加しているのかな。
(丸山) そうそう。それです。実際に橋爪さんにSyncableの存在を教えてもらってすぐにNPOの会費・寄付の決済サイトを変更したんですよ。おかげで支出が減った!
Syncable(シンカブル):個人と非営利団体を繋ぐ、ソーシャルアクションを促す寄付のプラットフォームサービス。 全国で活動する2,000以上の非営利団体へクレジットカードで寄付をすることができたり、ご自分で寄付を集めるキャンペーンページを作成することができる。
(橋爪) そんなこと、あったね。クレジット決済って法人として契約すると大変な手数料とかいるから。私はファンドレイジングを学ぶ中でSyncableの存在を知って、たまたまお話をしているとき「あぁ丸山さん、うちこれ使ってる、おすすめよ」って話をしたんだよね。
- みんなが一緒に活動する意味を感じますね。
(三坂) 本当にそうです。NPOの運営相談もだけど、それぞれ個人的な子育ての話や、ちょっとした雑談をしたり、愚痴をこぼせたりする場があるのもいい。
(丸山) それそれ。コロナが何かもよくわからなかったときも、つながっていたことって、すごく大きかった。あの年のNPOの総会、どうするの?って相談したよね。
それに、あの年の寄付月間日本大通実行委員会の活動は、船本さんが「コロナ禍で集まれないけど、会場の様子を配信しよう」って進めてくれた。自分たちだけだったら、考えもしないし、行動もできないこと。
(船本) あったあった。StreamYard(ストリームヤード)。コロナ禍一年目の試み、しました。ICTお助け隊にサポートをお願いしました。
2020寄付月間のオープニングイベント https://www.facebook.com/events/361425715142036
配信動画 https://youtu.be/7Ua60fEDlKI
(橋爪) あれはストリームヤードという仕組みもそうだけど、船本さんというプロがいるから、でもあるよね。動画配信の進行もだけど、そのための脚本が書けて。まわりが素人の集まりでも安心して進められたよね。
(丸山) 本当にそう。いい体験ができた。それぞれのスキルを学びあえて分けあうみたいな環境がある。自分たちになかったら誰かにお願いする、そんな行動につながっている。
そうだ、それ。もう一つ大切なことを思い出しました。寄付月間日本大通実行委員会の場は一年目から学びが多かったんです。ライフドック横浜のメンバーが、情報共有をGoogleクラウドで進めてくれて、複数のメンバーが一緒に活動できる基礎をつくってくれた。コロナ禍では当たり前になっているけど、それより前の話です。
(船本) 確かに。いまのカタチは最初からありましたね。ホームページはユースクラシックのメンバーがjimdoでつくってくれたし。それぞれの団体や個人のfacebookページでイベントを立てて共有することも最初から。連携して広報しあおうって進めてきましたね。
(橋爪) 本当に。得られることがたくさんあるって改めてわかる時間になりました。
来年も8月に声をかけあって12月に向かって進みましょう!
*寄付月間日本大通実行委員会は、毎年9月に募集して2月に開催しています。
【寄付月間日本大通実行委員会】
●ウェブサイト https://kifu-kosha33.jimdofree.com/
●Facebook https://www.facebook.com/givingdecember.nihonodori
●Instagram https://www.instagram.com/givingdecember.nihonodori/
●Twitter https://twitter.com/g12nihon_odori
【編集後記】菅原慧子(すがわらさとこ)
多様な「寄付」のかたち
寄付はする人はするし、しない人はしない。しない人を変えるのは難しいかもしれない…個人的にはそんな印象を持っていた。 そんな中で今回の対談を通じて改めて感じたのは寄付のバリエーションだ。寄付するのはお金だけじゃなく、時間でもいい。スキルでもいい。誰かに情報を伝えるだけでもいい。自分の中の認識・意識が少し変わるだけでも、寄付活動につながるのだということ。 一見、敷居が高く感じられる「寄付」という行為も、この行為のバリエーションに対する認知が進めば、もっと身近に・気軽に感じられる人も増えるのではないかと思った。
自分の望む社会への清き一票。というと、選挙みたいだけれど、選挙と同様に、選びたい未来に向けてできる行動なのだ。しかも年齢制限もない。子どもでも大人でも、自分の小さな行動がどんな社会につながるのか、つなげたいのかを想像・妄想しながらできるアクション。そんな寄付の魅力がわかったから、これからは私も気軽に寄付をして、そしてわが家の息子にも、その楽しさを伝えていきたい。