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VOICE 2019.10.10

日本語教室  | ビマルさん

VOICE|地球学校 : ビマルさん(27歳)

今現在地球学校に通っている人、これまでに通ったことがある先輩の方々から直接お話を伺うインタビュー企画、VOICE。

今回は、インドのチェンナイ出身のビマルさん。地球学校では、日本語のプライベートレッスンとともに、毎週土曜日にOPENしているKANJIカフェで、基礎(きそ)から漢字を学習しています。ビマルさんは、日本語の上達(じょうたつ)が、とても速い(はやい)ので、その秘訣(ひけつ)を聞いてみました。

 

- ビマルさん、初めて日本に来たのは、いつですか。

私は去年、2月23日、日本へ来ました。2018年です。

 

- 日本に来る前は、何をしていましたか。

インドのハイデラバードの会社で働いていました。日本の会社と仕事をするチームに所属(しょぞく)していました。

 

【写真】ビマルさんの出身は、インド(INDIA)の南東部にあるチェンナイ(Chennai)

1995年まではマドラスと呼ばれていた都市である。

 

 

来日後すぐは日本語を学習するチャンス

 

- 今は日本で何をしていますか。

横浜にある会社で働いています。デザイン・エンジニアです。車のエアバッグのデザインをしています。

 

- 会社には外国人が多いですか。

そんなに多くないです。インド人もいますけど、ドイツ人やスペイン人もいます。でも、日本人のほうが多いですね。

 

- 会社で、日本語を話しますか。

仕事では、ほとんど英語で話します。仕事で日本人のスタッフと話すときは、日本語で話すことも少しあります。

 

- 日本語は日本に来てから勉強したんですか。

いいえ、インドで少し日本語の勉強をしました。会社で、一カ月ぐらい、毎日1時間。文法とあいさつ、日本語の会話を勉強しました。日本の会社と仕事をするチームでしたから、ベーシックの日本語はインドで勉強しました。

 

- 地球学校で日本語のレッスンを始めたのは、いつですか。

2018年の7月です。同僚(どうりょう)に「日本語を習いたいです。どこで習ったらいいですか」と言ったら、ここ(←クリック)を紹介してもらいました。そのころは、特に趣味(しゅみ)もなかったし、独身(どくしん)なので時間もあったし、一人で、さびしかった(笑)。いま、日本語を勉強するチャンスだと思いました。


【写真】 菅原(すがわら)先生とプライベートレッスンをしているビマルさん

 

- プライベートレッスンでは、どんな日本語レッスンをしていますか。

毎週土曜日に2時間、初級のテキストを使っています。話す、と文法。あとは、しゃべるときインドの文化、日本の文化についても話します。

 

- 今はテキストの二冊目が終わるところだと聞きました。今までのレッスンで覚えているエピソードを何か教えてください。

日本語ですか?そうですね…「くれる」と「あげる」かな。混乱(こんらん)した。英語なら、どっちもgive、同じですよね。でも日本語は違います。「私に、くれました」「私が、あげました」

 

- レッスンがない日は、家でも勉強しますか。

はい、家で一時間ぐらい。毎日、日本語を勉強します。文字、文法、会話。インターネットで勉強したり、無料のJLPT学習用のアプリ、AnkiDroid…を使います。

あとはニュース。ニュースは毎日読みます。朝は歩きながらNews Web Easy(←クリック)を見ます。家から会社まで歩いて10分ぐらいです。一日に5つのニュースを読みます。やさしい日本語だからわかります。漢字にはひらがなも書いてありますから、漢字の勉強もできます。


【写真】ビマルさんが作ったExcel(エクセル)。会社の中で使う日本語のリスト。

 

 

- お昼休みは、勉強しないんですね(笑)

昼休みは、食べるだけ。私は外で食べます。同僚(どうりょう)といっしょに食べます。インド人、ドイツ人、外国人の社員(しゃいん)と行ったら英語で話します。日本人の社員と行くときは、日本語も話します。

- どんなものを食べますか。

ラーメン、やきそば、ゴーヤカリー、ゴーヤチャンプルー。ゴーヤは健康(けんこう)にいいですね。ラーメンは、みそ味が好きです。おすしも好きですよ。
 
 

漢字はストーリーで覚えると忘れません

 

- そういえば、N5に合格しましたね。おめでとうございます。

はい。7月のJLPT(日本語能力試験)は、N5レベルを受けました。合格しました。うれしかったです。これが合格証です。

【写真】7月に受験(じゅけん)した日本語能力試験(JLPT)の合否結果通知書。オールA!

 

JLPT(日本語能力試験)(←クリック)

上級のN1から入門のN5まで5段階のレベル別の試験。毎年7月と12月の第一日曜日が試験日。

 

- ところで、ビマルさんは地球学校で、プライベートレッスンだけではなく、KANJIカフェで漢字の勉強もしていますよね。いつからですか。どんなことをしていますか。

 

去年の10月からです。テストを受けるために漢字の勉強を家でします。土曜日に、KANJIカフェで漢字のテストを受けます。テストでは、漢字を書きます。読み方を書きます。テストの文を読みます。先生がチェックしてくれます。

 

- 毎週たくさん合格(ごうかく)していますね。家では、どんな勉強をしているんですか。

 

プレゼントでもらった漢字ノートに、テキストの漢字を書きます。読み方を書いて、意味を調べて書きます。

※漢字のテキストは『KANJI LOOK AND LEARN』(←クリック)

 

- ノートを見せてもらってもいいですか。

読み方は最初はアルファベットで書いたけど、ひらがなのほうがいいと思った。だから今はひらがなです。私は小さい「つ」の問題がありますから、気をつけて勉強します。ほかには、小さい「よ」も私の問題です。たとえば、「しょう」「しよう」気をつけています。
 

- てんてん(濁音=だくおん)の問題は、大丈夫ですか。

これは大丈夫。私の国の言葉は問題ない。そうだ、「う」の問題もあります。まとめテストは、「う」のミスがいっぱいありました(笑)

※漢字の読み方は、発音と直結するうえ、意味が違う言葉になるので、日本語学習の際、区別が重要になる問題。漢字を使用する中国の人にとっても、漢字を正確に読むことは難しい。
・「う」の問題とは、長音=ちょうおん、のこと。例えば、「すうじ(数字)」「すじ(筋)」の違い。
・「てんてん」の問題とは、濁音=だくおん、のこと。例えば、「だいがく(大学)」「たいがく(退学)」の違い。
・「つ」の問題とは、促音=そくおん、のこと。例えば、「あっか(悪化)」「あか(赤)」の違い。
・「よ」の問題とは、拗音=ようおん、のこと。例えば、「びょういん(病院)「びよういん(美容院)」の違い。

 
 


【写真】 ビマルさんの漢字ノート

 

- ビマルさんはテストの採点のとき、問題文を全部声に出して読みますが、過去に勉強した漢字も忘れないで、よく覚えていますよね。どうやったら漢字を忘れないですか。

ストーリーで覚えたら、忘れません。たとえば、このページなら…

結婚します。結婚するとき、皆さんは大吉(だいきち)になりますように、と願います。結婚したあとは、私は妻(つま)といっしょに、共に住んで家族になりますそのあとは、子供がうまれます。私たちは子供の両親になりました。私の子供は育ちます。若い人になりました。私たちは老人になりました。また子供がうまれて私は息子と娘がいます。男性と女性。妻、奥さんもいます。私たちは子供の将来(しょうらい)を考えます。子供たちは祖父と祖母に会います。もう一人子供がうまれたのでパーティをします。皆さんを招待(しょうたい)します。

 

- なるほど。漢字を見たら、そのストーリーはすぐにうかぶんですか。

テキストの漢字だけじゃなくて、ボキャブラリーの意味がわかったらイメージが出てきます。漢字の意味と文化を結びつけます。ストーリーは、前は使わなかったです。

最初は教科書を見て、意味を覚えて、あとはたくさん書きます。それだけ。でも、その勉強方法は、あとで何を勉強したか忘れました。でもストーリーをつくったら忘れませんでした。13課だったかな。そのぐらいからストーリーをつくって勉強をしたら、漢字を忘れないです。

 

- ビマルさんは、漢字テストに合格しなかったとき、当日ではなくて、次の週に受けますよね。記憶が新しいうちに受けたらパスできるのに…どうしてですか、

あ~、それは、パスすることが大切じゃないからです。テストをすると、自分がどのぐらい覚えているかわかります。これが大切。わからなかった漢字、ボキャブラリーが何かわかるので、それを勉強します。覚えます。

テストのときは前に勉強した漢字が問題文にあります。テストは合格しても、問題文で読めない漢字があるのがわかります。忘れていますね。

 

- じゃあ、漢字はストーリーで覚えたら大丈夫なんですね。

あ~、実は、それだけじゃだめです。家でストーリーで覚えて勉強したら、次の日、会社で暇なときとか…紙に書いてみます。思い出して、何も見ないで書きます。家で勉強したことを覚えているか、忘れているか、わかります。書いてみることは大切です。

 

- 日本語を勉強するとき、漢字は苦手だという人が多いです。ビマルさんはどうして漢字が好きなんでしょう

私は小さいときからパズルとか、そういうのが好きですね。それから、日本にいますから、旅行するときや、毎日、漢字をたくさん見ますね。レストランにいってメニューを見ます。ぜんぶ漢字で書いてある。何が書いてありますか?わかりません。でも、それを知っていたら楽しいですね。だから知りたいです。

 

- きっと小さいときから好奇心(こうきしん)がある少年だったんでしょうね。

そうかもしれません。日本に来て、漢字が嫌(いや)、というより「これは何が書いてあるんだろう?」と思いました。
実は日本で、まだ漢字が何も読めなかったとき、レストランへ行きました。私はメニューを見て、ひらがなのものだけ注文(ちゅうもん)しました(笑)

 

- ひらがなだけ?いったい何を注文(ちゅうもん)したんですか。

ごはん、さしみ。これはひらがなだったから、それを読んで注文したら、ごはんがきました(笑)さしみもきました(笑)

サプライズですね。ぜんぶ食べました。

 

- おもしろいエピソードですね!チャレンジャー。

はい(笑)。食べ物と飲み物の漢字を知っていることは大事ですね。生活に必要な漢字がわかるようになったら楽しいです。

 


【写真】 KANJIカフェで漢字テストを受けているビマルさん

 

漢字がわかったら日本の生活が楽しい

 

- 今後の目標(もくひょう)を教えてください。日本語の目標です。

JLPTのN2レベルに合格したいです。でも、今まで勉強した漢字を、よく覚えなければなりませんね。復習して、本とか新聞とか、それを読むことを、もっと勉強したいです。これ、bookoffで買いました。(と、買ったばかりのマンガを見せてもらいました)

日本の漫画は漢字に読み方もあるし、絵でストーリーもわかりやすいし、いいですね。日本人はラッキーです。これはbookoffで100円です。インドにはこの値段のマンガはないです。

それから、YouTubeで日本のドラマを見ます。ラブ?恋愛(れんあい)ドラマを見ます。インドのドラマは家族のドラマが多いです。いつも誰か悲しい(笑)。家族の中にある問題のドラマです。私の母はよく見ます。でも私はインドのドラマは好きじゃないですね。

 

- 最後に日本語を勉強している外国人にメッセージをお願いします。

漢字は、毎日勉強してください。必ず書いてみてください。あとは、どこかへ行って、漢字の意味がわかるか、チェックしてみてください。たとえば旅行したとき、ポスターとか見たとき、わかりますか。わかったら楽しくなります。

最初は、毎日使う漢字から勉強してください。たとえば、「行く」とか、「電車」とか、駅でよく見る一般的な、必要な漢字です。それで自信(じしん)をUPします。あとは、どんどんレベルアップできます。

 

- どんどんレベルアップをすると、どんな気持ちなんですか。

ポキモン、ポケモン?ポケモンカードを集めているかんじです。「あ、私、もう100枚集めた!」「コンプリートした」、漢字カードが増えていくイメージです。それは楽しい。


【写真】 KANJIマスター「ゴールド」の証明(しょうめい)カード。初級の漢字をコンプリートしました。

 

- 楽しいと思えるまでが大変なんですよね…漢字は勉強したくない、忙しいからできない、という人がいっぱいいます。どうしたらいいですか。

時間があったら、必ず勉強してください。私たちは日本に住んでいますから、いま、必要ですよね。国へ帰ったら漢字を見ることはありません。いまは日本にいます。たくさん漢字を見ることができます。わかるようになったら楽しいです。

最初はミス、まちがいがあっても大丈夫です。漢字もそうですが、しゃべるときも自信(じしん)をもってください。話すとき、自信をもって話しましょう。心配(しんぱい)しないで話してください。私は話すとき、それは正しいですか、間違いですか、と、ちょっと考えますから、話すのがおそいです。でも、まちがっても大丈夫、と思って話したら上手になりました

 

- インドの人は、まちがいを気にしない人が多いイメージですが、ちがいますか。

インド人でもシャイな人もいます。南インドの人はシャイな人が多いです。私もそうです。北インドの人はシャイじゃない人が多いです(笑)

たとえば、パーティに行ったとき、北インドの人は歌ったり、おどったりする人が多いですが、私は苦手です。

 

- インドもいろいろなんですね。

はい、言葉もちがいます。私はタミル語です。ヒンディ語は少し話せますが、言葉も文字もちがいます。文法は同じだけど、タミル語の人がヒンディ語を聞いても、わからないです。

仕事で住んでいたハイデラバードは、テルグ語です。それはタミル語と似ています。私はテルグ語も話せます。ハイデラバードでは英語とテルグ語を話しました。

それから、インド人はベジタリアンが多いですが、北の人のほうがベジタリアンは多いです。南は魚が多くとれますから、魚をよく食べます。

日本人から見たら、インド人はみんな同じに見えるかもしれませんが、インドの中でも習慣(しゅうかん)や文化(ぶんか)は、ぜんぜんちがいます。いろいろです。

 

★インタビュー後記★

言葉をゆっくりと丁寧に紡ぎだす、礼儀正しいビマルさん。それは南インド出身であることも理由の一つなのかもしれません。

最近はレッスンのあとバドミントンをしているそうです。家の近くにあるスポーツセンターで、インドの人たちと楽しむのだそうです。

 

 

【プライベートレッスン担当の菅原(すがわら)先生のコメント】

ビマルさんは、ポジティブな努力家だと思います。レッスンをする度に、いつも復習をきちんとしているなと感じます。なぜなら、その日のレッスンでできなかった事が、次のレッスンではスムーズにできているからです。

「もらう、くれる」の時、練習では結構ミスが目立ちました。質問、説明を何度か繰り返しましたが、念のため次のレッスンでもう一度細かく説明しようと準備しました。しかし次のレッスンでは、つまることなくあっさりクリアしました。彼なりにきちんと復習、整理してきたのがよくわかりました。そして、今まで何度かこのやりとりをしてきました。

ビマルさんは、日本語の学習を毎日の生活にうまく取り入れています。アプリで日本語のニュースを読む、マンガやドラマを見る、会社やスーパーで積極的に日本語を話してみる、など。

沢山の成功談、失敗談を話す時のビマルさんは、とても楽しそうです。まわりの反応が、自信につながり、日本語学習のモチベーションアップにもつながっているのかなと思います。

「やらなければ」だと辛いですが、自分で何をするか考え、実践するので、続けやすいのだと思います。この受身ではない姿勢と続ける努力が、彼の日本語を上達させているのではないかと思います。

 
【KANJIカフェ担当の藤澤(ふじさわ)先生のコメント】
KANJIカフェでのビマルさんは、とても力強い、いい字を書きます。実直な人柄を表すような、丁寧でしっかりした字ですね。

一歩ずつ確実に進めていく感じで、もちろん不合格になることもあるのですが、次には必ず合格しますし、ギリギリで合格!というときも、宿題に出した練習をきちんとこなしてきます。また、KANJIカフェでは、テストで読み方や漢字を書いた後、必ず音読をしてもらいますが、その中でのやりとりでも、ヒントから正しい答えを導き出していきます。しっかり身につけようという意識が感じられます。

文字学習はとにかく自分と向き合うことになると思っています。「覚える」というのはなかなかつらい作業です。
でもビマルさんは、単に複雑な文字を覚えるというだけでなく、出てくる漢字でストーリーを作るなど、覚えるための工夫をいろいろされていると聞きました。
彼自身のそういった学習ストラテジーとテストの仕組みがうまく噛み合って、ここまでこられたのだと思います。